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厨二メロス①

07-09,2011

なんか友達と「厨二ぽく昔話」っていうの話してたら気になったので書いてみました。


メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を我が右手に眠る力『立ち尽くす亡霊(ホーンテッドメイビス)』で除かなければならぬと決意した。
メロスには政治が分からぬ。メロスは、普通の大学生である。勉強をし、友と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
今日未明メロスは学生寮を出発し、バスと電車を乗り継いで、10里離れた白楠学園にやってきた。メロスには父も、母もない。彼女もない。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、町の律儀な一学生を、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近なのである。メロスは、それゆえ、花嫁の友達や教師を呼びに、はるばる高校にやってきたのだ。まずその人々を招待しそれから校内をぶらぶら歩いた。
メロスには竹馬の友があった。歳は4つ下で名はセリヌンティウスである。今はこの白楠学園で、風紀委員をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく会わなかったのだから、訪ねていくのが楽しみである。
歩いているうちにメロスは、町の様子を怪しく思った。ひっそりとしている。もう既に日も落ちて、校庭が暗いのはあたりまえだが、けれども、なんだが、夜のせいでばかりではなく、学校全体がやけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になってきた。廊下で会った若い衆を捕まえて、何があったのか、二年前にこの学校に来たときは、夜でも皆が歌を歌って、学校はにぎやかであったはずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いてもやしに会い、今度はもっと語勢を強くして質問した。もやしは答えなかった。メロスは両手でもやしの体を揺すぶって質問を重ねた。もやしは、辺りをはばかる低声で、わずかに答えた
「生徒会長は人を殺します」
「なぜ殺すのだ」
「悪心を抱いてる、というのですが、だれもそんな、悪心を持っていないんです」
「たくさんに人を殺したのか」
「はい、始めは書記会計を。それから、ご自身の後継ぎを。それから、彼女様を。それから担当の教師を」
「驚いた。生徒会長は乱心か」
「いいえ、乱心ではありません。人、信ずることができぬ、というのです。このごろは、副会長の心をもお疑いになり、すこしはでな服装をしている者には、人質一人ずつ差し出すことを命じています。命令を拒めば能力にかけられて殺されます。今日は、6人殺されました」
聞いて、メロスは激怒した。「あきれた会長だ。生かしておけぬ」


 メロスは単純な男であった。そのままのそのそ生徒会室に入っていった。たちまち彼は、警備員に捕縛された。
「ええい、これだから国立は。こうなったら俺の『立ち尽くす亡霊』で」
メロスの右手から黒い瘴気が発せられる。しかしその煙が急に消えた。
「何! 俺の能力が・・・・・・」
たじろぐメロスに一人の男が近づく。かの生徒会長である。
「フン。メロスといったな。先ほどの能力・・・・・・貴様も『能力持ち』ということだな」
「貴様などには関係の無い話!」
「どうして自分の能力が封じられたのかも分からなぬか」
「・・・・・・さっきのはお前が!」
「そういうことだ。それで、俺に用があるのか?」
暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を持って問い詰めた。その王の顔は蒼白で、みけんのしわは、刻み込まれたように深かった。
「学園を暴君の手から救うのだ」メロスは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」王は、憫笑した。「しかたのない奴だ。おまえなどには、俺様の孤独の心が分からぬ」
「言うな!」メロスは、いきりたって反駁した。「馬鹿じゃねのか! 皆がお前を信用していたんだろ? だから生徒会長になってモンになれちゃんじゃねえのかよ!? なのに、お前は裏切った! 疑った! 分かってんのか!? 人のこころを疑うっていうのは最もしてはならないものなんだ! それを・・・・・・お前って奴は!」
けれどもディオニスは動じない「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、お前たちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私欲の塊さ。信じては、ならぬ」会長は落ち着いて、つぶやき、ほっとため息をついた。「俺様だって、平和を望んでいるのだが」
「なんのための平和だ。自分の地位を守るためか」今度はメロスが嘲笑した。「罪の無い人間を殺して、何が平和だ」
「黙れ」会長は、さっと顔を上げて報いた。「口では、どんな清らかなことでも言える。俺様には、人のはらわたの奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、今に、はりつけになってから、泣いてわびたって聞かぬぞ」
「ああ、会長はりこうだ。うぬぼれているがよい。俺はちゃんと死ねる覚悟でいるのに、命乞いなど決してしない。ただ――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落として瞬時ためらい、「俺に情けをかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限をくれ。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたい、三日のうちに、わたしは村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰ってくる」



出典「走れメロス」 太宰治 著
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